ほりすてぃっくうぃずだむ

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「moi」 再レビュー

@のほうで、昨日アップしたものをこちらにもアーカイブ。
読まれる方は追記からどうぞ。

リライトにあたって、曲をじっくり聴きなおしてみたり、よだかの星読んだり、歌詞を読み返してみたり、結構いろいろやってみました。
やっぱ名盤だと思うんだなー。

ライスVOXで初めて触れたっていうお客さんが、どうか1枚でも買ってってくれたらいいんだけどな…。

ライスVOXも迫ってきた、ということで、ちょっと文章を書きたくなりました。
以前にも、moiの全曲レビューなんてものをやっている(こちら)のですけど、せっかくですし、このタイミングで、もう一度「こんな曲なんだよ!」「こんなアルバムなんだよ!」という情報を出すという意味でも、全曲レビューをしたいと思います!

1. うーん、もう

みきとPさん作詞作曲による、2ndデジタルシングルです。
紫リウムやリズムに乗せたハンドクラップ、サビ前の「じゅ~んび、おっけい!」のコールなどの指定がある曲でもあります。
リリース前はもちろん、後を考えても、実はこういう、本当にポップで、スタンダードな曲は珍しい…、というか、そもそもないんですよね。相沢さんの歌声ってものすごくエモーショナルで、だからこそbuzzGさんの楽曲とはとても相性がいいと常々思っていたりするのですが、その中でよくぞこの曲を書いてくれました!と言いたくなる曲です(これはmoi発売直後のニコ生でも、相沢さん自身がおっしゃってましたけれど)。
当時「うーん、もう、って「羽毛」にひっかけてるんではあるまいな?w」なんて言ったこともありましたが(駄洒落かよ!)、恋愛ソングかと思ったらお布団様に癒される曲だったりして、からっとした声や感情で歌われたポップな曲なのに、なんだかんだやっぱりちょっと哀しめの詞だったりするのも、結構好きなポイントですw
相沢さんのハジケた側面をバッチリ切り取った、これも(buzzGさんの曲を歌っているときとは逆を行く)相沢さんらしい一曲だと思います。

2. Speech Balloon

school food punishmentの蓮尾理之さん作曲、buzzGさん作詞の、アルバムにおけるリード・トラックですね。

嘘吐き 本当のあなたは雨に濡れて躍る仔猫 震えながら
どんな歪な感情も その空欄も
埋める声をきっと探して

サビの歌詞、冒頭の「嘘吐き」を残したくて、レコーディング直前になって第一稿のこの歌詞に戻した、なんてエピソードもありますが、本当にいい歌詞です。
自分が、どこかさみしくなった時、辛い時、それでも笑っていなきゃなんないっていうときに、「嘘吐き」なんて言われたら、確実に泣くと思いません?そのシーンはとてもドラマ的ですけれど、でも辛い時にふとした言葉が支えになったりということはあると思うんですよね。

臆病な私は躓くのが怖くてずっと俯いていた
幽かなあなたの声はドラマみたいな空や星や
ささやく風や帰る場所を今日も示して

そして、自分に「嘘吐き」といった彼女も、「幽かなあなたの声は」「帰る場所を今日も示」すと言うんですよ。こういう、うっすらとしていて、でも確かに思える繋がりって、とても大人な関係だと思うんですけど、甘酸っぱくもあるように思えます。
この世界観を相沢さんが歌うと、とても鮮やかで、モノクロームに彩られるというか、そういう感覚にするっと陥っちゃったりします。そういう感情が歌声に乗っていると思います。「エモーショナルな歌声」って、「歌手・相沢舞」としての、ひとつの大きな特徴だと思っています(し、今後とも推していきたいのです)が、そこが綺麗に、鮮やかに滲む、本当に良曲だと思います。

3. タイム・カプセル

buzzGさんのアルバム「Ghost Trail Revelies」からの、リマスタリングでの収録です。もちろん作詞作曲はbuzzGさん。

出し抜いて手に入れたもの
嘘で固められた偽物の唄
ありふれた言葉じゃもう笑えなくなった顔で
今日も生きてる

だあああっ!なんでこんな歌詞書くですか!泣くぞ!
一口に「エモーショナル」といっても、喜怒哀楽あるわけなのですが、俺個人としては、相沢さんの「エモーショナル」は「基本属性が哀愁にある」と思っていたりします。限りなく白に近い灰。何色だと言われれば確かに灰色ですが、とても白くて美しい。
そんな世界観にバッチリ嵌った一曲だと思います。
Aサビとラスサビ、ぜひ聴き比べてみてください。感情の動きや、コントラストが美しすぎて、惹きこまれて聴き入っちゃうはず。

やや余談になってしまいますが、buzzGさんのアルバム「Ghost Trail Revelies」も、もし聴いたことがないな、という方がいらっしゃったら、ぜひ聴いてみてほしい1枚です。
最初に書いたようにこの曲も収録されていますし、クロスフェードのナレーションは相沢さんがご担当されています(こちら)。
ラストに収録されている「イントロダクション」という曲は、元気のない時に聴くとマジ泣きできる、そしてすっきりする名曲です。お気に入り。

4. 1572

こちらもbuzzGさん作詞作曲による、書き下ろしのロック・ナンバーです。
一転してすごくパワフルです。これは「未来日記」のライブ「The Live World」でも感じたことですが、あの小さいボディのどこにこれ程のパワーがあるんだろう?と思うくらい。
歌詞は宮沢賢治よだかの星」がモチーフとしているとのことですが、悲劇的ではないですし、むしろ前向きで、後押ししてくれるよう。よだかのように「完ぺきにはなれない」というけれど、「それでもさ」と、くっと前を向かせてくれる歌詞です。

それでもさ 君に会いたいんだ 不細工なままで飛べるような
あのメロディ 奇跡みたいな顔して
聴こえてきてきてくれないかな

サビの出だしの「それでもさ」。本当にここが素晴らしいんです。
ぐいっと引っ張られるような力がありますし、本当にノれる。かっこいいんです。
前回の、Yatsui Festival 2013でもセット・リスト入りした楽曲ですが、そのパフォーマンスは本当に素晴らしかったです。生バンドということも併せて。
今回のライスVOXも生バンドとのことですから、演って欲しいと思っていますし、ぜひ聴きに来てほしいと思います。
このアルバムは全曲お気に入りですが、その中でも特に好きな曲です。

5. free

みきとPさん書き下ろしの楽曲です。もちろん作詞作曲はみきとPさん。
この曲も本当に相沢さんが詰まってます。曲を制作するにあたって、ミーティングがもたれ、その時に相沢さんの発した「ぼっちでも生きていける、大丈夫」という言葉がキーワードなんだそうです。
キーワード自体も、とても「らしい」と思えるのですが、ここからみきとPさんが書いた歌詞が本当に秀逸で。

涙の数だけ弱くなっていく 心の奥に拡がる風の穴

「大丈夫」という言葉から出てくる歌詞ではないようにも思えますが、一種の強がりを見透かすような、本当にえぐってくる歌詞だと思います。
でも、後半はすうっと晴れるような歌声とともに、歌詞もどんどん晴れていくようで。1572が力強く後押しする曲なら、freeは澄んだ思いが乗った声で、そっと光を差すような印象の曲だと思います。
ラスサビの転調も併せて、すごく落ち着きながらも元気づけられる曲です。

6. その刹那

今や人気グループとなったfhánaさんによる提供楽曲です(当時はLantisからデビューする前でした)。
小沢健二インスパイアの楽曲ということで、曲の間の語り(「愛し愛されて生きるのさ」ですね)が入っていたり、さわやかな印象の楽曲になっています。そのさわやかさからは、個人的には「ぼくらが旅に出る理由」のほうを想起したりしていますがw
歌詞と歌声、ここでもまた「エモーショナル」ですが、意味がまた違うのですよね。オザケンの、挙げた楽曲たち(もっといえばそれらが収められているアルバム「LIFE」の楽曲)って、「君を応援する僕」っていう曲が多いと思うんですけれど、この曲は「僕が応援する君」っていう曲だと思うんです。

走れ 光射すあの向こうへ
君の望む一瞬はそこにある
目を背けてたら逃してしまう
見つめていたい儚い瞬間を

freeよりもはっきりと、力強く、それでいて優しい、1572とも違う方向性の、応援ソングなのかなと。1572、free、その刹那と続くこの3曲の流れは、本当に秀逸です。

7. キミニトドケ

デビューシングルのキミニトドケが、収録リスト上はラストに来ます。
この曲を最初に聴いたのは、ニコニコ超会議での、テクノスクールでのライブパフォーマンスの時でした。ブースを囲む人だかりの、少し外から、楽しそうに歌う相沢さんを見ていたのでした。
なんというか、本当に相沢さんらしいというか。控えめに控えめな、でもとても 切ない恋の歌です。
ここまでの楽曲と違う、「私が勇気を振り絞って、届けたい思い」という感情を最後に持ってくるのは、本当にズルいと思いますw
ラスサビ前のセリフと、相沢さん独特の笑い声が、ふっと抜けていくところがとても大好きです。

8. 最後のいいわけ(Secret)

最後の最後、シークレット・トラックとして収録されているのが、あるがまふぃあの有賀俊輔さんとのデュエット曲である、この曲です。
はっきり言って、この曲は反則だと思っています。他の7曲のどれとも繋がらない空気感、世界観がこの曲にはあります。本当に挑戦的です。もともと収録予定がなかったこともあり、シークレット・トラックとなったという経緯がありますが、それとは別に、この曲だけで完成されていると思います。7曲聴き終ってすっきりしたところに、豪奢なドルチェがついてきた、みたいな(よくわからない比喩表現)。
というのは、当時舞台をやられていたり(東京アンテナコンテナさんの作品にご出演されるようになるよりも以前の話ですが)したこともあって、「いろんな人と一つの世界観を作るということに、楽曲上でも挑戦してみたかった」というのが、この曲ができたそもそもの理由なんだそうです。そして、有賀さんと解釈や世界観をぶつけてできたのが、この曲なんです。男女の静かな終末を描いたこの曲もまた、本当に良曲だと思います。あまり相沢さんの曲を知らない、という方に、1曲お勧めするんだとしたら、実はこの曲を選びます。それほどの破壊力があると、俺はけっこう信じていたりします。

全体を通して

最初にも書きましたけれど、相沢さんの歌声の大きな魅力は「エモーショナル」だと思うんです。このアルバムにもたくさん詰まってます。でも、全部色が違うんです。

ポップではじけた「うーん、もう」。
鮮やかなモノクロームに彩られた「Speech Balloon」。
霧のような、白灰色の美しさを持っている「タイム・カプセル」。
力強く感情を揺さぶる「1572」。
そっと光を差すように柔らかな「free」。
グッと力強く、それでいて優しい「その刹那」。
切ない勇気を伝えたいという思いが、はっきり届く「キミニトドケ」。
ふたりの歌声が、柔らかくも切なく、静かに紡がれる「最後のいいわけ」。

ひとことで表してしまえば、確かにそれは「エモーショナル」ですが、このアルバムにはとにかくたくさんの感情が詰め込まれてます。一曲一曲をじっくり聴いて、それを受け取ると、きっと最後にはふっと心が軽くなるような、心地よさを感じられると思います。
ぜひ機会なので、本当に聴いてみてほしいです。

なぜ今レビューを書く気になったのか

半分は思いつきなんですけれどw
相沢さんのこのtweetを見て、「聴いてほしい!」という思いが改めて浮かんできて、すらすらと 書き出してしまっていましたw

リンクにもiTunes StoreのアルバムページへのURLがついています。
ホント、聴いてみてください。絶対損はさせないから。なんならまず最後のいいわけを聴いてみるとかそういうところからでもいいので!